“またね。”
聞くのが怖かった。

どうしてかはわからないけれど。

「聞きたい?」

大ちゃんは不敵な笑みを浮かべ、菜摘に目を向ける。

大きな目で上目遣いなんてするから、またドキドキした。

「聞き…たい」

もし別れた理由が、菜摘と付き合うためだったら?

そう思うと聞かずにはいられなかった。

大ちゃんは表情を変えずに、窓を閉めながら口を開いた。



「…喧嘩したから。腹立ったから別れた」



─は?

喧嘩?

そんだけ?

「…喧嘩ですか?」

予想もしていなかった返事に、驚くことしかできない。

「うん、そんだけ。あいつマジ無理」

少し気まずそうに言うと、菜摘の方を向いた。

『腹立ったから』って言ったのに、その表情はまるで悲しんでいるようで

それがとてもショックだった。


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