“またね。”
ねぇ、ハッキリ言ってよ。

今の状態は嫌。

付き合うのも嫌。

そんなこと言ったら、これからの選択肢は1つしかないじゃない。

「じゃあなに?ただの友達になんかなれないよ。そんなことわかってるでしょ?」

そう言うと、大ちゃんは黙り込んでしまった。

菜摘は自分でも不思議なほどに冷静だった。

覚悟とまではいかないけど、やっと頭で理解できたんだろうか。



少なくなった泡を手ですくう。

強く吹くと、泡が大雑把に飛んだ。

そして、儚く散っていく。

漫画みたいに、綺麗なシャボン玉になったらいいのにな─



『付き合おう』

この言葉は言わない。

言ったところでどうなるの?

何かが変わる?

大ちゃんが困るだけ。

自分が虚しくなるだけ。

この関係が終わるだけ。

それなら言わない方がいいじゃない。



「大ちゃんはどうしたいの?」



これは賭け。

『付き合おう』

そう言ってくれたら…。



言ってくれないのはわかってる。

言ってくれなかったら、もう会わない。



ただ、もしも─

あなたが私を『必要』だと言ってくれるのなら

私はずっと、あなたの傍にいる。

だからこれは『賭け』。

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