“またね。”
走り始めてから1時間。

あと数十分で目的地の海に着く。

「ねぇ、大ちゃん」

何もない田舎道。

車もなければ人もいない。

「ん?どした?」

たまに見かける店も閉まっていて

少し開けている窓から、潮の香りが入り込む。

「菜摘のどこが好き?」

「はっ!?」

こっちを向き、目を見開く大ちゃん。

「危ないってば。前向いてよ」

「ああ…うん」

慌てて前を向いた大ちゃんは、まだ驚きを隠せない様子だ。

そりゃあ驚くよね。

大ちゃんにこんなこと聞くの初めてだもん。

でも、ずっと聞きたかったんだ。

『菜摘が好きだよ』

あの日から、ずっと。



「あー…うん。聞きたい?」

聞きたいから聞いてるんじゃん。

だって─

大ちゃんは、きっと答えてくれるから。

「聞きたい」

あんなに驚いていたのに、大ちゃんはもう、いつもの余裕な笑顔になっていた。



自分で聞いたのに、少し緊張する。

そして、大ちゃんが口を開いた。
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