“またね。”
「あん時さ、会えて嬉しかったんだよね」

『あん時』だけじゃさすがにわからない。

「いつ?」

「カラオケん時」

出会って間もない頃のことだろうか。

初めてたくさん話をした、あの日。

「ゲーセンで会ったじゃん。そん時からちょっと気になってたっぽい」

『ぽい』って、そんな曖昧な。

でも気にしてくれてたんだ。

嬉しいな─

「それで?」

『急かすなよ』と笑い、大ちゃんは続けた。

「ガスやった日さ、嫌われたと思った」

「嫌いになんかなってないって言ったじゃん」

「いや、そうだけどさ」

嫌われたと思ったんだよ、と繰り返す。

もう緊張は解けていて、ただ続きが気になった。

「そんであいつに告られて付き合ったら、お前告ってきたじゃん」

もうダメだと思ったのに、と

大ちゃんは苦く微笑んだ。



─『あいつ1回断ってるよ』─



─あの時、大ちゃんは『なんで』って言った。

『なんで』の意味。

そういうことだったの?



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