“またね。”
「菜摘は?なんで俺のこと好きなの?」

気付けばもう海に到着していた。

もう7月なのに、不思議と車は1台もない。

それだけで─

世界中に2人しかいなくなったような錯覚に陥る。

「んー…運命感じちゃったからかな」

平然と答えてはみたけれど、やっぱり恥ずかしくて

つい笑ってごまかす。

「マジ?俺も」

目が合うと、大ちゃんはやっぱり可愛く微笑む。

「じゃあ、どこが好き?」

聞かれるとけっこう恥ずかしいもの。

さっきはよくあんな平然と聞けたなあ、なんて思った。

「優しいのに優しくないとことか、嘘付けないくせに嘘つきなとことか」

本当の気持ち。

大ちゃんは少し困った顔をした。

「お前たまにわけわかんないこと言うよな。難しくてわかんねぇよ」

「そう?」

ちっとも難しくなんてない。

ちょっとからかってみただけ。

それは、とても簡単なこと。



「全部好きだってことだよ」



上げたらきりがない。

たくさんありすぎる。

それなら『全部』って言うしかないじゃない。

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