“またね。”
「なんだそれ。俺、真面目に答えたのに」

シートに体を預け、目を合わせたまま笑う。

「菜摘だって真面目だもん」

本当に、全てが好き。

悪いところですら愛しく思う。

唯一、嫌なところは─

何かあった時、何も言ってくれないところ。

だって寂しいじゃない。



「ありがと」



例えば─

『雪が溶けたら何になる?』と聞かれたら

あなたは『水』でも『春』でもなく『泥』と答えるような、とても寂しい人で

そういうところが、何よりも大好きなんだ。



弱くて

汚くて

不器用で

寂しくて

孤独で

それなのに、とても綺麗な人。

大ちゃんより綺麗な人を見たことがない。

そんなの、好きにならないわけがないじゃない。

全部全部、大好きだよ。
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