“またね。”
オレンジ掛かった灯り。

元から薄暗い部屋をさらに暗くすると、大きなベッドに腰掛ける。

「なんか緊張する」

「うん。菜摘も」

けれどこの緊張感は心地いい。

愛しさを増す。



どちらからともなく唇を重ね

ゆっくりと、純白のシーツに包まれた。





名前を呼ぶ声も

寂しげな表情も

髪に触れる手も

体に這う唇も

少し癖のある髪も

滴れ落ちる汗さえも

全てが欲しい。

全てが愛しい。

全てを、愛してる。



「─…愛してるよ」



つい呟いてしまった一言に、大ちゃんは微笑んだ。

気付いたら流れていた涙を、冷たい手で優しく拭う。



「泣き虫。俺も愛してるよ」



愛してる。

狂おしいほどに。

あなたの全てに私は溺れる。

めちゃくちゃに壊してほしい。



ねぇ、離さないで。

何も望まないから─

ただ、傍にいさせてください。

あなたがいなければ

私は呼吸さえできない。

あなたは、私の全てだから。



あなたが私に笑いかけてくれるのなら、私はなんだってする。

だから─

ずっと

ずっと

傍にいさせてください…。




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