“またね。”
「勉強してた」
【勉強!?なんで!?】
「行く高校決めたから」
菜摘に『勉強してた』と言われて驚かない人はあまりいないと思う。
美香は高校に行かないらしいから、余計にそうかもしれない。
【私立行くんじゃなかったの?勉強する必要なくない?】
「公立にした。で、なに?」
ノートを閉じ、煙草に火をつける。
一瞬セブンスターの香りがした気がして、もう重症なのかな、と思った。
【そうそう。菜摘、寺田って人知らない?】
寺田?
聞いたことすらないし、美香のことだから先輩かな。
「知らない。その人がどうかした?」
【山岸くんは知ってる?】
山岸って、大輔のこと?
美香の口から大輔の名前が出てくるなんてかなり意外だ。
なんていうか、タイプが全然違うから。
美香はヤンキーかギャルか際どいところで、格好は地味じゃない方の菜摘でも並んで歩くのを躊躇するほど、とにかく派手な子。
それに対して、大輔は至って普通の高校生だ。
「大輔でしょ?知ってるけどなに?」
美香の話はこうだった。