“またね。”
それからは寝るにも寝れず、そのまま学校へ行った。

授業中はずっと上の空。

みんな心配して、話し掛けてくれたけれど

『大丈夫だよ』

『なんでもないよ』

『元気だよ』

そう言い続けた。

だって、こんなこと誰にも言えないじゃない。



10時を回った頃、ポケットで携帯が震えた。

相手を確認するためにサブ画面に見ると、余計にわけがわからなくなった。



【着信中:大ちゃん】



大ちゃん─?

今度はなに?

まさか、また彼女じゃないよね?

うんざりしつつ、携帯を握ったまま立ち上がる。

「先生、菜摘トイレ行ってくる」

「おう。早く戻ってこいよ」

「うん」



廊下に出ると、不在着信をクリックし、電話を掛け直す。

呼び出し音も鳴っていないのに、『プツ』という音が聞こえた。

【もしもし、菜摘?俺だけど!】

大ちゃんは焦っている様子だ。

大ちゃんの声を聞いた瞬間、ほんの少しだけ安心した。

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