“またね。”

彼の彼女

時間というのは嫌でも過ぎる。

もう学校は終わった。

1人でゲームセンターへ向かう。

体験入学のあとに大ちゃんと再会した、あの場所。

あれから1度もきていなかったけれど、まさかこんな形でまたくることになるなんて

大ちゃんと会えるのに、嬉しいと思えない日がくるなんて

夢にも思わなかった。



ゲームセンターに着くと携帯が鳴った。

《受信:大ちゃん
着いたよ。菜摘は?》

さっきまで落ち着いていた心臓が少し騒ぎ始める。

緊張しているわけじゃない。

こんな時まで、大ちゃんは菜摘の胸を高鳴らせる。

…最後の最後まで、大ちゃんでいっぱいなんだ。



辺りを見渡すと、車が1台。

あれかな…?

少しずつ歩み寄る。

「菜摘、こっちだよ。乗って」

菜摘に気付いた大ちゃんが、助手席から顔を覗かせた。

「…うん」

たまらなく大好きな瞬間なのに、ちっとも喜べない。

いつもとは全然違う状況なんだよな、と改めて実感させられた。

そして、ゆっくりと後部座席に乗り込んだ。
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