“またね。”
「初めまして。菜摘ちゃんだよね?」

彼女─『真理恵さん』は、とても誰かを殴ったりするとは思えない

色白で華奢で、おとなしそうな人だった。

「…はい。菜摘です。初めまして」



そして─

見るからに傷んだ明るい髪色。

ウェーブがかかったセミロング。



─『俺、髪長い子が好きなんだ』─



ああ─

そうか。

どんなに頑張っても、ダメだったんだ。

頑張って伸ばした髪も

必死に手入れした日々も

全てが無駄だったのかな─



そう思った瞬間、菜摘の中で何かが変わった。

『糸が切れた』という表現が1番似つかわしいと思う。



車を少し走らせ、人気の少ない場所に車を停める。

真理恵さんは後ろを向くと、さっきよりも少し低い声で切り出した。

「さっそく聞くけど、いつから大輔と関係持ってたの?」

それから真理恵さんは、いくつか質問をしてきた。

いつ知り合ったのか。

彼女がいることを知っていて、どうして関係を持っていたのか。

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