“またね。”
何も隠さず、あったことを話す。

─つもりだったのに

菜摘の口は、正反対の台詞を吐いていた。



「…なんで言わなきゃなんないの?」



元々悪かった空気が更に凍てついた。

呆気にとられている真理恵さんをきつく睨み付ける。

「いつから関係持ってたかなんてさ、メール見たなら知ってんでしょ?わざわざ聞いてどうすんの?」

真理恵さんは開いていた口を閉じ、みるみるうちに表情が変わっていく。

怒りに満ちた表情へ。

大ちゃんも驚きを隠せない様子だ。

「…ふざけないでよ。なに開き直ってんの?あんた自分が何言ってるかわかってる?頭おかしいんじゃないの!?」

開き直り?

それは違う。

「知ってることわざわざ聞いて何になんの?」

言いたくない。

大ちゃんがくれた言葉も

大ちゃんがしてくれたことも

何ひとつ、言いたくない。



菜摘といる時の大ちゃんは、菜摘しか知らないじゃない。

2人の世界は、2人しか知らないじゃない。

2人が過ごしてきた時間は、2人だけのもの。

誰も邪魔しないでよ。

思い出まで壊さないでよ。

そんな権利、誰にもないじゃない。



頭がおかしいと言われても

最低だと言われても構わない。

絶対に言いたくない。


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