“またね。”
「山岸に、菜摘元気かって聞かれたんだよ。お前ら仲良かったから、会ってねぇのかなって気になってさ」

大ちゃん…。

菜摘のこと、気にしてくれてるの─?

「山岸にタメ口きいたり呼び捨てしてる後輩なんてお前くらいだもんな。ほんと仲良かったよな」

植木くんが『ははっ』と笑う。

─今、なんて…

「それ、ほんと…?」

「あ?どれ?」

「呼び捨てとか、タメ口とか、菜摘だけって…」

「ああ、マジだよ。みんな『山岸さん』とか」



─『敬語とかさん付けとか、あんま慣れてないしさ』─



─嘘つき。

大ちゃん、やっぱり嘘つきじゃん。



「…そっか。結婚おめでとうって言っといてね」

「いや、自分で言えよ」

ハンドルを握りながら植木くんが笑う。

言えるわけないじゃない。

もう、会えないんだから。



「そういや後ろにでかい封筒ねぇ?結婚式のパンフレットみたいなやつ入ってるよ」

─パンフレット?

植木くんの言う通り、茶封筒が置いてある。

怖いけど、見たい。

「これ…借りていい?見たい」

「ああ、いいよ。そのうち返せよ」

「うん、ありがと」

何か書いてあるかもしれない。

真実を知りたい。

まだ曖昧なことがたくさんあるから。



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