“またね。”
そこには、何ひとつ変わらない大ちゃんの姿。

もう1度だけ会いたいと願い続けた、愛してやまない人。



たった数メートル走っただけなのに、それからじゃ考えられないほど息が上がる。

目を見開き、固まっていた大ちゃんは

やっぱり、すぐに笑顔を取り戻した。

「久しぶりだね。…元気してた?」

久しぶりに見た、大好きな笑顔は

相変わらず可愛くて、どこか切なかった。

「うん…久しぶり。元気だったよ」

ずっとずっと、会いたかったよ。



12月なのに、雪が降っているのに、全身が熱い。

焼けたように熱い喉のせいか、かすれた声しか出ない。

「…大ちゃん、ちょっと話せない?」

最後に…

ずっと伝えたかったことがあるの。

「…うん。仕事までまだ時間あるし、話そっか」

微笑み、ポケットから車の鍵を取り出す。



ありがとう。

少しだけだから。

最後に、伝えさせてください。



大ちゃんの車に乗る。

変わらない香りは、とても懐かしくて

菜摘の決意を、少しだけ揺らがせた。



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