“またね。”

「あ…はあ、どうも」

人見知りの菜摘は、目を合わさずに軽く会釈だけ返す。

そういえば大輔には人見知りなんてしなかったっけ。

「んな緊張しないでよー!仲良くしてねー」

菜摘はノリが悪いんだろうか、馴れ馴れしい人がすごく苦手だ。

『ギャハハ』と下品な笑い方になんとなく苛つき、初めて寺田くんをしっかりと見る。



…ああ、この人か。

あの時はよく見てなかったけど、なんとなく覚えてる。

美香に負けないほどのピアスの数に、鼻にもピアスが1つ。



「寺ちゃん、臭いよー。吸っちゃダメって言ってるじゃん」

「ごめんごめん」

煙草を持つ手を軽く上げ、また下品に笑った。

寺田くんもハイテンション…っていうか、どこかおかしい。

目はうつろだし、語尾を伸ばす変な喋り方。

変な人。

正直、どちらかと言えば嫌いな部類だ。



……それに、今のふたりの会話。

『臭いから吸っちゃダメ』

煙草の話ならいいけど、美香と寺田くんが吸ってる煙草の銘柄は同じだし

何より喫煙者が『煙草臭いから吸うな』とはあまり言わないと思う。

すごく嫌な予感がした。


< 47 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop