“またね。”
ビルの最上階で話していると、ふたりはすぐにきた。
「お待たせぇ~!待ったあ?」
やっぱり変な寺田くんが美香にまとわりつく。
……っていか、さっきよりも変。
元々変な喋り方だったけど、もう呂律が回ってない。
「なつみぃーっ」
後ろから急に抱きつかれて振り向くと、へらへらと力なく笑う大輔。
……やっぱり。
大輔の手には白く濁ったビニール袋。
もちろん寺田くんの手にも。
嫌な予感ほど的中するものだと思う。
「…大輔、何してんの?」
大輔の右手首を掴む。
やっぱりシンナーだ。
「どしたあ?なんで怒ってんのぉ?」
うつろな目に聞き取りにくい喋り方。
こんな大輔、見たくない。
本当にショックだった。
どうしてさっき止めなかったんだろう。
「離せよ!ふざけんな!」
まとわりつく大輔の腕を振り払う。
きつく睨むと、大輔は少し悲しそうな表情を見せ、屋外へと歩いて行った。