“またね。”
……ねぇ、嘘でしょ?
大輔、どうしてシンナーなんか吸ってるの?
じゃれ合う美香と寺田くんの声が勘に障る。
苛立ちを抑えられない。
「…ねぇ、それってシンナーだよね?」
ふと、さっきの会話を思い出す。
─『臭いよ』─
─『吸っちゃダメって言ってるじゃん』─
やっぱり、それしかないよね。
「そうだよ。菜摘やったことないの?」
寺田くんへの質問の答えが美香から返ってきたことに怒りが増した。
この子はどうして平然としてるんだろう。
美香もやってるの?
菜摘はシンナーや薬が大嫌いだって知ってるはずなのに。
こう思うのは自惚れなんだろうか。
「あ、でも山岸くんはガスだよ」
「ガス?」
「知らないの?シンナーみたいなもんだけど、ガスの方が軽いんだよ」
……は?
何それ。
「まあガスの方がお利口かな。依存しないし。ちょっと幻覚とか見えてラリっちゃうくらいだよ」
ガスはお利口?
バカなこと言わないでよ。
幻覚見えるなんてシンナーと同じじゃん。
「あ、嫌いって言ってたっけ?菜摘って見かけによらずけっこういい子だもんね」
……いい子?
ふざけてんのかな。
バカにしてんのかな。
意味がわからない。
「…勝手にやってろよ」
苛立ちを抑えきれず、ふたりを置いて大輔のあとを追った。