“またね。”

長い階段を駆け下りてビルの出入口が見えた時、力強く腕を引かれた。

反動で振り向くと、息を切らせた大輔の姿。

「…大輔」

「送ってく。…てかお前歩くのはえーよ」

走ってきてくれたのかな…。

肩で息をしながら、菜摘の頭に手を乗せて

困ったように笑った。



「…美香は?」

「知らね。ここらへんでお前ひとりじゃ危ないって」

いろんな奴らがうろついてる時間帯だし、と付け足して、大輔が歩き出す。

あんな状態の寺田くんとふたりきりでいる美香の方が危ないと思うんだけど。



……どうしてかわからないけれど

泣きそうになった。



私、この人が好き。

大好き。



涙を堪え、大輔に続いて外へ出る。

……ああ、なんか寒いと思ってたら

もう、夜だったんだ。


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