“またね。”

かっこいいこと言ったくせに、大輔が徒歩だったことをふたりともすっかり忘れてた。

「…どうすんの?」

「2ケツすりゃいいじゃん」

「2ケツはいいけど、帰りは?」

「…わかんない」

…天然というか、計画性がないというか。

菜摘もそうだから、人のことは言えないけど。

「まあいいじゃん。とりあえず送る」

大輔に腕を引かれて荷台にまたがった。

「大輔、何型?」

なんでも血液型で判断しようとするのが菜摘の変な癖。

「A型だよ」

「え、ほんと?菜摘と同じだ」

意外だな、と思いながら、大輔の腰に手を回す。

「お前A型っぽくないのにね」

「…めちゃくちゃこっちの台詞ですけど」

大輔は『ははっ』と笑い、ペダルを強く踏んだ。



よかった。

元通りだ。

話し方も笑い方も、いつもの大輔。

さっきの出来事は夢だったんじゃないかと思ってしまうくらい。



自分はこの人のことを何も知らないんだ、と痛感した。

知り合ってから日が浅すぎる。


< 55 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop