“またね。”

「どこまで送ってくれるの?」

「ん?家まで」

「はっ?いいよ、遠いもん!帰り歩きなんだよ?」

「いいから。俺は男、菜摘は女」

菜摘のこと、女として見てくれてるんだ。

素直に嬉しかった。

「…うん。ありがと」

「素直でよろしい」



大輔はさ―

菜摘のこと、どういう目で見てくれてるの?



「チャリ貸してあげよっか?」

「いいよ。あさってから修学旅行だし、返すの遅くなっちゃうから。通学困るだろ」

聞きたいけど

『妹として』なんてベタな台詞を言われたら、ちょっと立ち直れない。

「そうなんだ。お土産よろしくね」

『好きだよ』って言ったら、なんて言う?

「はあー?買わねぇよ」

『俺もだよ』って、言ってくれる?

「ひどっ。まあ楽しんでね」

それとも、拒否されるのかな。

「ありがと。あんま楽しみじゃないけどね」



どうなっても、言ってみればよかった。

そしたら……

何か変わっていたかもしれないのに。


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