“またね。”
家に着くまで残り5分。
やっぱり会話は途切れない。
……でも、もう気付き始めてた。
大輔は、あまり自分のことを話してくれない。
「ねぇ、大輔」
「ん?」
そっと大輔の背中に額を当てた。
男らしい、広い背中。
不思議と心臓は落ち着いていた。
「…ガスさ、やめなね」
菜摘がこんなことを言える立場なのか、そんなのわからない。
でもどうしてもやめてほしい。
…菜摘は、薬で壊れてしまった人を知ってる。
「やめなかったら、嫌いになる?」
細い道を抜けると、自転車が止まる。
もう着いちゃった。
「…なっちゃうかも」
なるわけないよ。
嫌いになんてなりたくない。
嫌いなんてなれるわけがない。
もう、それくらい好き。
「じゃあ、やめなきゃね」
……ほら
そうやって、期待させる。
「約束ね」
やっぱり大輔のことはよくわからない。
だって、あまり自分を見せてくれない。