“またね。”
9月下旬。
まだ暑さが残っていた上旬とは打って変わって、昼間でも少し肌寒い。
約束通り、隆志に連れられて体験入学へ参加した。
今日は土曜日。休日に早起きなんて、学年一の遅刻魔を誇る菜摘にとってはものすごく苦痛だ。
「ねぇ隆志、かっこいい人いるかなあ?」
「主旨が違うだろ。男漁りに行くんじゃないんだから」
男漁りとまではいかないけど、休みの日まで勉強なんかしたくない。
とにかく面倒臭くてしょうがなかった菜摘が見つけた、唯一楽しめる方法。
“かっこいい人を探す”
「いたとしても菜摘なんか相手にされないって」
「うっさいな、どうせブスですよ。でもかっこいい彼氏ほしい!」
「ブスなんて言ってないだろ。恥ずかしいから大声出さないでくださいよ」
隆志がこぐ自転車の荷台に乗り、呆れる隆志や、じろじろ見てくる通行人を無視しながらはしゃぐ。
「いい人いたらいいな…」
隆志の背中に額を当て、そっと呟いた。