“またね。”
ガスやシンナーのことは言えなかった。
『言わなかった』の方が正しいかな。
そんな人やめなよ、って言われるだろうから。
菜摘が逆の立場でもきっとそう言う。
そういうことをする人は大嫌い。
……だったはずなのに。
大輔はきっと、すごく寂しい人。
だからって許されることじゃないのは、よくわかってる。
ガスなら軽いからいいなんて思ってない。
「…それでもいい。菜摘さ、知り合ったばっかだし嘘だと思うかもしんないけど…本気で好きなんだ」
でも、『この人のために何ができるんだろう』って
初めて思えたんだ。
余計なお世話かな…。
遊びはもちろん悲しいけど、この言葉は本心。
「なんてこと言うの?」
伊織の悲しそうな表情を見て、胸が痛んだ。
伊織は菜摘を心配してくれているからこそ厳しいことを言う。
それはちゃんとわかってる。
「…でも、ほんとに好きなんだね」
眉を下げ、小さく囁いた。