“またね。”
秋風が菜摘の横をすり抜ける。
短くしたスカートから伸びた足にすっかり冷たくなった風があたり、膝がヒリヒリと痛む。
「新しい出会いだらけだもんね。きっといい人いるよ」
「そうだといいな」
額を離し、俯いたまま小さく微笑んだ。
「一緒に受かりたいね」
「あれー?私立受けるんじゃなかったの?」
ついポロッと言ってしまった一言を、隆志がからかうためのネタとしてしっかり拾う。
「うるさいってば。てかみんなで同じ高校行きたい」
「無理だよ。バカ菜摘とはみんなレベルが違うから」
からかう隆志の背中を強めに叩くと、自転車が揺れた。
バカってどう考えても余計でしょ。
「いってー!」
「次また変なこと言ったら殴るから」
「…はいはい。もう殴ったと思うけど」
レベルが違うなんて、そんなのよくわかってる。
伊織の志望校なんて市内でトップの高校だし。
学年ほぼ最下位の菜摘には、その高校名を願書に記入することすらありえない。
ていうかこないだ書こうとしたら、担任に『真面目にやりなさい』ってこっぴどく怒られた。