“またね。”
第2章+涙をこえて+
繋がり
11月中旬にもなると、もうすっかり冬の匂いがする。
あれから大輔とは、たまに連絡をとることはあっても
1度も会うことのないまま、もう1ヶ月が過ぎようとしていた。
「そうそう。なっつ、やっぱりやればできるじゃん」
「うん。菜摘天才かもしんない」
テスト結果は、自分でも驚くほど良かった。
数学の90点を見た時なんて、嬉しくてその場で泣いちゃったくらいだ。
でも気を緩めることなく伊織から勉強を教わっていた。
「…そういえば、山岸さんとはどうなったの?」
控え目に言う伊織に、ペンを持つ手が止まる。
「あー…振られたよ。彼女できたってさ」
自分で言ったのに、なんだか悲しくなる。
「…何それ」
いつもより数トーン低い伊織の声が響く。
慌てて視線を合わせ、できる限り微笑んだ。
「いいんだって。しょうがないじゃん」
─しょうがない?
本当にそう思ってるのかな。
自分でもよくわからない。
伊織は納得がいかないらしく、表情を歪ませた。
『だから言ったじゃん』と言わないのは、伊織の優しさだと思う。
たぶん─
いくら強がったり理解したふりをしていても
1番納得がいかないのは、菜摘自身かもしれない。