“またね。”
その夜、久しぶりに美香からメールがきた。
美香から連絡がきたのはあの日以来だ。
《受信:美香
植木って人知ってるよね?今から植木くんとこ行くんだけど、菜摘もこない?》
『植木くん』は同じ中学校出身の、2歳年上の先輩。
直接関わりはないけど、菜摘のお兄ちゃんが植木くんの先輩だから、お互いのことは知ってる。
話したことすらないけど。
正直、あまり乗り気にはなれない。
《送信:美香
あんま行きたくないんだけど》
ただでさえ人見知りするのに、話したことすらない人の家になんて行きたくない。
それに…
“あの日”のことが引っ掛かっていて、美香に少し不信感を抱いてる。
《受信:美香
そんなこと言わないでよお。お願い!》
美香は言い出したら聞かない子。
また断っても、電話がきて『行く』と言うまで切ってくれなさそう。
それはそれでかなり面倒臭い。
《送信:美香
わかったよ。行く》
1回だけならいいかな。
そんな軽い気持ちだった。
でも行って良かったと、本当にそう思う。