“またね。”
近くのコンビニで待ち合わせ、美香と合流した。
夜11時過ぎにコンビニの前に立つ中学生は、たぶんちょっと浮いてる。
「てかさ、菜摘、植木くんと話したことすらないんだけど。菜摘もいて大丈夫なの?」
自転車をこぎながら、白い息を吐く。
大輔と知り合った頃とは比べ物にならない寒さだ。
「菜摘もいるって言ったから大丈夫だよ。なんか今、男6人で飲み会してるんだって。1人で行くの怖いじゃん?」
…そういうことか。
菜摘にはお兄ちゃんがいるから、ある意味ボディーガードってことね。
美香ってこういう子。
わかってはいるけど、なんとなく憎めないタイプ。
甘え上手なのかな。
「菜摘人見知りするしさ、やっぱ嫌なんだけど」
「いいからいいから。あ、あそこだよ」
黒い屋根の一軒家が見えた。
菜摘の家から10分程度の距離。
自転車から下り、半ば強引に連れられて玄関の前に立つ。
「あ、あのさ」
忘れるところだった。
美香はキョトンとしながら首をかしげる。
「聞きたいことあるんだけど」
『聞きたいこと』
“あの日”のこと。