“またね。”

「美香さ。…シンナーなんかやってないよね？」



─『やったことないの？』─

─『けっこういい子だもんね』─



あんな風に言ったってことは、美香もやってるってことじゃないの？

それに、あの日─

寺田くんの隣で、美香は平然としていた。



美香は少し驚き、

でもすぐ笑顔に戻った。

「やってないよお。菜摘、何言ってんの？」

言いながら、ケラケラと笑う。

「ほんと？」

「ほんとだよ。周りにやってる人いるから見慣れてるけど、あたしはやってないって」

本当かな。

やっぱりまだ不信感は残るけど、美香本人が『やってない』って言うなら信じたい。

「聞きたいことってそれだけ？じゃあ行こっか」

笑顔のまま、玄関のドアを開く。



信じていいんだよね？

だって美香は、悪い子ではないと思うから。