“またね。”
…でも、寂しいんだ。
ずっと一緒にいたのに離ればなれなんて。
ふたりのいない生活なんて考えられない。
菜摘を理解してくれる友達なんて、この先つくれる自信がない。
だから隆志だけが頼みの綱なんだ。
素直にこう言えたらいいけど、意地っ張りの菜摘には到底無理な話。
でも、きっと……
隆志は、言わなくてもわかってくれてる。
「あと何分ー?」
「もう着くよ」
「まじ?タイどこやったっけ」
「制服くらいちゃんと着とけよ。とりあえずスカート短すぎ」
「うるさい」
横断歩道を渡って右に曲がると、やたらと大きな建物が見えた。
中学生の菜摘にとって、“高校”は未知の世界。
高校生の自分を想像しただけで違和感だらけだ。
どんな人がいるんだろう。
不安なんて微塵もない。
期待だけに胸を膨らませ、菜摘は未知の世界へと足を踏み入れた。