“またね。”
菜摘は大輔の荷台に座り、美香は駿くんの後ろに立つ。
腰に手を回すと、自転車が発進した。
「菜摘重くなった?太ったろ?」
「太ってないよバカ!厚着だからだもん!」
笑う大輔の背中を叩く。
仮にも女の子に言うことじゃないでしょ。
「いてぇな!殴んなよ!」
「うるさいバカ!」
2人の言い合いに美香と駿くんが笑う。
気付けばいつものノリになっていて、緊張はすぐにほぐれていった。
「そういやお前、髪黒くしたんだね」
…黒くしたの1ヶ月前ですけど。
ちなみに、黒くしてから1回会いましたけど。
どんだけ菜摘に興味ないのこの人。
「うん。受験生ですから」
「意外と真面目じゃん。人は見掛けに寄んないってマジだね」
「二言くらい余計だけどね」
『意外』だの『見掛けに寄らない』だの、この2・3年で聞き飽きたってば。
「うちの高校くるんだよね?」
「うん。勉強頑張ってるよ」
「いい子じゃん」
「優等生だもん」
「はは、嘘つくなって」
大輔の紺色のマフラーが風に揺れる。
「頑張って受かれよ。待ってるから」
─…頑張るから
あんまりドキドキさせないでよ。