“またね。”

「てかさ、大ちゃん全然飲んでないね」

「俺、酒弱いんだよ」

煙草を消してお茶を手に取る。

キャップを開けたら、大輔にペットボトルを取られた。

「てかさ。みんな寝ちゃったし、散歩でもする?」

散歩?

2人で?

「うん!行く!」

そんなの行かないわけがない。

散歩好きなんだよね、と笑う大輔を見て

なぜだか、あの日の瞳を思い出した。

弱くて綺麗な、寂しい瞳を。



さっそく立ち上がって上着を着る。

「お前、今日なんか素直だね」

大輔も立ち上がり、菜摘の頭を軽く撫でた。

この身長差がちょっと嫌。

兄妹みたい。

「でしょ。可愛い?」

「はあ?殺すぞ」

『殺すぞ』って。

そんなこと言いながら、触れる手は優しいんだ。

笑顔だって、すごく優しいんだ。



どうしてかな。

大輔に触れられると

嬉しいはずなのに、寂しくなる。



すごく、すごく

切なくなるんだ─


< 88 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop