“またね。”
「てかさ、大ちゃん全然飲んでないね」
「俺、酒弱いんだよ」
煙草を消してお茶を手に取る。
キャップを開けたら、大輔にペットボトルを取られた。
「てかさ。みんな寝ちゃったし、散歩でもする?」
散歩?
2人で?
「うん!行く!」
そんなの行かないわけがない。
散歩好きなんだよね、と笑う大輔を見て
なぜだか、あの日の瞳を思い出した。
弱くて綺麗な、寂しい瞳を。
さっそく立ち上がって上着を着る。
「お前、今日なんか素直だね」
大輔も立ち上がり、菜摘の頭を軽く撫でた。
この身長差がちょっと嫌。
兄妹みたい。
「でしょ。可愛い?」
「はあ?殺すぞ」
『殺すぞ』って。
そんなこと言いながら、触れる手は優しいんだ。
笑顔だって、すごく優しいんだ。
どうしてかな。
大輔に触れられると
嬉しいはずなのに、寂しくなる。
すごく、すごく
切なくなるんだ─