“またね。”
離れかけた手がまた戻る。
今度は指を絡めて、しっかりと握った。
でもみんなのところへ戻ったら、また離さなきゃいけない。
それはまるで─
これからの2人を表しているようだった。
「俺もだよ」
戻る途中、大ちゃんが言った。
「何が?」
「初めて」
『初めて』?
「なに?」
前を向いたまま、大ちゃんが小さく笑った。
「『大ちゃん』って呼ばれたの、初めて」
少し─
ほんの少しだけど
照れているように見えた。
「ほんとに?」
「うん。みんな普通に『山岸』か『大輔』って、呼び捨てだもん」
そうなんだ…。
「そういえばさ、菜摘も男にあだ名つけたの初めてだ」
「マジ?今日は初めて尽くしだね」
大ちゃんの照れた顔を見たのも、今日が初めてだよ。
「だからさ、これからもそう呼んでね」
そんな笑顔向けないでよ。
大好きすぎてたまらない。
ねぇ、私は─
あなたの中に、存在していますか?
あなたの中で、少しでも“特別”ですか─?