“またね。”

部屋に戻ると、みんな床に寝ていたおかげでベッドが空いていた。

「ベッド空いてんじゃん。ラッキー。菜摘、寝よ」

「へっ?」

『寝よ』って…

「一緒に寝るの?」

「うん。だってベッドしか空いてないし。嫌?」

嫌じゃないけど、もちろん嬉しいけど…

「おいで」

─どうしてかわからないけど

『おいで』って言われたら、素直に行っちゃう。

『おいで』って言われたら、絶対に拒めない。



隣に寝転がると、腕枕をされた。

「腕枕も初めて?」

「うん」

…さすがにこれは嘘だけど。

「マジ?やったね。どうですか?」

違和感があってちょっと寝にくい腕枕が、実はけっこう苦手だったりする。

ふわふわの枕で寝る方がずっと気持ちいいと思ってた。

でも…

「なんか、落ち着く…」

妙に安心して、ついうとうとする。

目をつむると、大ちゃんの手が、菜摘の前髪にそっと触れた。



─…気のせいかな。

夢か現実かはわからないけれど

おでこに、一瞬だけキスをされた気がした。



「おやすみ」



あの日、あなたの笑顔を見つめながら

この夢が、決して覚めませんようにと

願いました―


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