“またね。”
信じたい
12月上旬。
テストもやっと終わり、あとはイベントが盛りだくさんの冬休みを待つのみ。
─正直に言えば
もうすっかり忘れてた。
だって、もうないと思ってたから。
信じてたから。
信じたかったから。
事の始まりは1通のメール。
《受信:美香
植木くんち行かない?テスト終わったよね?山岸くんもいるみたいだよ!》
メールがくるまで眠ってたのに、その名前を見ただけで一気に目が覚める。
大ちゃんに会えるの─?
《送信:美香
行く!準備するから先行ってて!》
そう送ったのが間違いだったのかな。
雪が街灯に照らされ、キラキラと輝く。
白い道に足跡がついていく。
雪が降ってる方が、降ってない時と比べて暖かい。
『大ちゃんに会いたい』と逸る気持ちが、自然と足を速める。
─もっと、もっと早く行けば良かったのかな。
美香と一緒に行けば良かったのかな。
そうしたら、こんな光景を見なくて済んだ?
そう後悔したのは
植木くんの部屋のドアを開けた瞬間だった。