指先で紡ぐ月影歌
鉄之助も土方と共に生きて最後まで戦い抜き、そしてこの地で散る覚悟を固めていた。
少しでも彼の側にいられるように。
少しでも彼の力になれるように。
しかし、そんな鉄之助の思いは土方の部屋に入った瞬間に打ち砕かれることになる。
他の誰でもない、土方の手によって。
「これを…日野に、ですか…?」
「あぁ。あと江戸の大東屋にもだ」
手渡されたものと告げられた言葉に、鉄之助は信じられないといった表情で土方を見つめた。
震える声は隠せていない。
土方はあからさまに動揺している鉄之助に背を向けたまま小さく頷く。