指先で紡ぐ月影歌




「市村。お前にしか頼めねぇんだ」




振り返ることなく告げられた土方の言葉に、ズキリと鉄之助の胸の奥が痛む。


"お前にしか頼めない"


それはいつか言われてみたかった言葉。


仕事といえば雑用といっても過言ではない立場だった鉄之助にとって、それは夢のような言葉。


喜んで受け取れると、頷けると思っていた。

それを嬉しくないと感じる日が来るなど考えたこともなくて。




「そ、それは…私が、足手纒いだということですか…?」




情けないほどに声が震える。

じわりじわりと視界が歪んでいくのがわかる。




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