指先で紡ぐ月影歌
(泣く、な…!)
それでもなんとか流れそうになるものを耐え、言葉を紡いだ。
瞳は真っ直ぐに土方を見つめている。
「んなわけねぇだろ。お前は昔も今もよくやってる。そこらの兵士よりずっと信頼してるさ」
そんな鉄之助の言葉を否定してそう言い切る土方。
揺らぐことのない声。動じることのない背中。
その言葉に嘘はないのだろう。
相変わらず背を向けたままの彼の表情は見えない。
だが、その背中は言葉以上のものを語っている。
信頼も、不安も。
決意も覚悟も。
土方の切なる小さな願いさえも。