指先で紡ぐ月影歌
それでも、それがわかっていても鉄之助は引くことが出来なかった。
出来るはずがない。
此処での最後を、それだけを思い描いてきたのだから。
「い、嫌です…嫌です!!私は…俺は!先生の、副長の傍で戦いたいんです!!」
震える声で紡いだのは、揺るがぬ覚悟と強い信念。
それは土方が持っているものと同じもの。
鉄之助の、貫きたい真っ直ぐな思いであった。
土方と鉄之助の二人しか存在しないこの部屋には、魂から発せられたその叫びが強く響く。
それを邪魔するものはない。
混乱する頭の片隅で、鉄之助は今までこれほど副長に言葉を返したことがあっただろうかとぼんやり思っていた。