指先で紡ぐ月影歌
「ここから先にあるのは死だけだ。そんなとこにお前を放り出すわけにはいかねぇ」
静寂を破るように確かな意志をもって紡がれた土方の声。
土方は絶対に鉄之助の方を向こうとはしない。
まるで背中で語るものが全てだというように。
それが、嫌でも鉄之助に"最後の時"を教えようとしていた。
だからこそ足掻かなくては、と鉄之助の本能が叫びを上げる。
(俺は、この人のために戦いたいんだ)
誰よりも憧れたこの人のために。
途中、流山付近で姿を消した兄のようにはなりたくない。
絶対に、この人を裏切りたくはない。