指先で紡ぐ月影歌




俺だってそう思うんだ。

総司もそれはわかっていたんだと思う。


わかっていたからこそ、天水の才能の剣だけは負けたくないのだと思うんだ。


だってあの人を打ち負かしたときの総司の顔といったらない。

それはそれは輝いていること。

あんないい顔するのかと驚いたくらいだ。


知っていた。


あの人がそうであるように、総司もまた自らの鍛練を絶やしたことがないことを。

弱音など、一度も吐いたことがないことを。


それくらい、総司がたった一本の刀に賭けてることを俺は知っていた。


だけど総司は知っているのだろうか。


あの人が、剣では総司に勝てないことをみとめていることを。


いつだったか言っていた。

総司の剣は俺の見本だ、と。




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