指先で紡ぐ月影歌
カシャン
床に転がる刀の鞘。
抜かれた銀色の刃は、寸分も狂うことなく鉄之助の首筋に突き付けられた。
「ーっ」
コクリと鉄之助の唾を飲み込む音が静寂に響く。
身体中から吹き出る汗。沸き上がる恐怖。
見開いた目に映る銀は幾つもの血の匂いを纏っていて。それでもなお鈍く光る。
それは幾つもの戦いで守った誇りと、失ったものの色。
鼻を掠める匂いが、まるで土方の手が直接首に掛かっているような。そんな錯覚に陥らせる。
銀の先を辿れば、やっと見えたその姿。
言葉を失った鉄之助に、土方はこの日初めて真正面から視線を向けた。