指先で紡ぐ月影歌
酒の席でのことだったけれど、あの人は確かに俺にそう漏らした。
きっと総司は知らない。
そんなふうに総司の闘志を知りながら、認めていることを隠していることを。
認めていながら、いつまでも張り合う立場でいることを総司は知らない。
でも、それでいいのかもしれない。
総司はそうすることで自らを高めてきたのだから。
そうすることで今も尚生きる糧にしているかもしれないから。
だからそれは俺の心の中だけに留めておく。
俺が総司の療養している部屋を出ていく間際を俺に向かって『絶対勝ちますから!鍛練怠ったりしないでくださいよ!』と綺麗な顔で笑った総司。
それは総司が俺に最後に見せた精一杯の強がりだったのかもしれない。