指先で紡ぐ月影歌




この頃にはもう総司の病状は悪化の一途を辿っていて。

名医と呼ばれる松本良順先生さえ、もう手の施しようがなくなっていた。


総司もそんな自分の状態についてわかっていたようだ。


情けないですね、と痛々しく笑ったあいつ。

その姿にはかつて一番組を率いていた面影はない。


労咳。不治の病と呼ばれたそれに、まさか誰よりも明るく笑っていた総司が侵されるなんて。


何て皮肉な話なんだろう。

もっともっと、剣を握ることが出来たはずなのに。その才があるのに。


何故あいつの大事なものを奪った。

何故若い総司が苦しめられなくちゃならなかったんだろうか。


加えて近藤さんは怪我を負って動けねぇ。


近藤四天王と呼ばれた男たちも、今は俺と斎藤しか残っていない。




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