指先で紡ぐ月影歌




形成は完全に逆転し、いつの間にか倒幕派の連中が官軍と呼ばれるようになった頃。


それでも幕府側の人間として戦い続けていた俺たちはかつての地・江戸まで戻ってきていた。


漸く前線に復帰した近藤さんは、あの鳥羽伏見の戦いの苦戦を知らない。

あの戦いで痛感した相手方の力量を知らない。


それ故に先の戦いで俺たちは甚大な被害を出していた。


そんななかで言い放たれた近藤さんの言葉。


お前たちは俺の部下だって。

あの揉めた時と同じ言葉を近藤さんは口にした。


二度と聞きたくなかった言葉にギリッと奥歯を噛み締める。


そんな俺たちに近藤さんはその大きな口を閉ざした。




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