指先で紡ぐ月影歌
なんで近藤さんはそうなんだろう。
なんでいつもそうなんだ。
優しすぎるんだよ、あんたって人は。
その言葉の裏にある思いをわからないほど浅い付き合いじゃないんだといい加減理解してほしい。
あの頃とは言葉の意味が違うんだってことに気付かない俺たちじゃないとわかってほしい。
何年一緒にいたと思ってるんだ。
どんなに言い合いをしたって、文句を言ったって離れなかった意味をちゃんとわかってくれてるのか。
俺たちが出ていった後、どうせ一人で泣くんだろ?
声を殺して、小さく肩を震わせて。
そしてあの人は、何も言わずに近藤さん肩を叩くんだ。
あの時、俺にそうしたように。