指先で紡ぐ月影歌




一緒に来てくれと、そう一言言ってくれりゃよかった。

俺とともに散ってくれと。

たった一言そう言ってくれりゃあ、喜んで最後まで着いていったのに。


ここまで来て俺らの命を優先するなんて。

本当馬鹿すぎる。


でもそんな近藤さんだから、そういう人だからここまで着いてきた。

優しくてお人好しで仲間思いな、そんな人。


だからそれ以上詰め寄ることなんて俺には出来なかったんだ。


左之助もきっと同じだったんだろう。

強く、唇を噛み締めたあいつに気付かないほど馬鹿じゃない。


そんな近藤さんの傍らで、あの人は静かに俺たちを見つめていた。


それが、最後。


俺が生きたあの人たちに会った最後だった。




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