指先で紡ぐ月影歌




遂に新撰組を出ていく。

数年前まで考えたこともなかった日の前夜。


俺が最後に言葉を交わしたのは、近藤さんでも斎藤でも左之助でもあの人でもなく、島田だった。


一人月を見上げていたところにやって来たそいつ。


同じ二番隊士として長い間俺の下にいてくれた男。


でかい図体とは裏腹にとにかく甘いものが大好きなこの男は、総司とはまた違った意味で人懐っこい。

というより人に好かれやすい。


そして、組のなかでも兼監察方として山崎たちとともに土方さんの汚れ役を担っていた奴でもある。


長年一緒にいたけれど、こいつにはここを出ていくことや俺の考えは一切話さなかった。




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