指先で紡ぐ月影歌




斎藤も生きているだろう。

あいつの腕は確かだし、何よりも引き際をわかっている頭のいい男だ。


そしてあの人は…もういない。


わかっていた。

近藤さんが死んだとき。総司が死んだとき。


それだけじゃない。

平助や山南さん、源さんという昔からの仲間が次々と散っていって。


それでも前を向き進み続けていたあの人は、最後まで戦いのなかに生き、戦いのなかに散っていくのだろうと。


親友に腹すら切らせてやれなかったあの人が、自ら命を絶つことはない。

だからといって捕まるつもりなんてもっと無かったはずだ。


あの人には意地も誇りも、守るものもあったから。


それにあの人は"生きる"ために戦う人だったから。




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