指先で紡ぐ月影歌
なんなんだ。なんなんだ、これは。
俺の願望が見せた幻なんだろうか。
そう思いながらも瞬きすら忘れて彼の姿を見つめる。
あぁ、目頭が熱い。
そんな俺を見た土方さんはククッと喉を鳴らして笑った。
『しけた面してんじゃねぇよ。らしくねぇな』
そう言いながらその場に腰をおろし、彼は俺が持ってきた酒を猪口に注ぐ。
その一つ一つの仕草が、笑い方が間違いなく土方さんで。懐かしくて仕方ない。
これが夢でも幻でもかまわねぇ。
だって俺はまたこの人に会いたかった。
「…そんな、ひでぇ顔してるか?俺」
震える声で情けなく発したその問いに、土方さんは"死人みたいな顔してるぞ"と片眉を上げた。