指先で紡ぐ月影歌
何となく、わかってる。
今の自分がどんな表情をしているのかくらい。
きっとあの頃にはしたことのなかったような情けない顔をしているんだろう。
それでも聞き返しちまったのは、まだこの夢みたいな時間を終わらせたくなかったから。
そんな俺の考えなんてお見通しだったんだろうか。
土方さんは片眉を上げたまま目を閉じ再び笑う。
それは"わかってんだろ?"と呆れたように肩を竦めるときにする土方さんのお決まりの表情。
そして自ら手に持った盃を傾けながら、もう一つのそれにも酒を注ぎ俺の方へと突き出した。
それを受け取り俺も酒を煽る。
一瞬くらっと目眩がしたのは気のせいだと思いたい。